北の果て、ウラジオストク駅は快晴
ハバロフスクから出発したシベリア鉄道オケアン号は、ほぼ定刻通りにウラジオストク駅に到着した。ウラジオストク駅はモスクワ駅から9288km離れており、ホームにはキロポスト(距離標)もある。ハバロフスクからウラジオストクへの道のりは、モスクワからウラジオストクを目指した場合、最後の一駅ということになる。
到着したウラジオストクは快晴。空気はぴりりと冷たい。ハバロフスクが4月下旬にしてはやけに暖かかったせいか、この日のウラジオストクはちょっぴり寒く感じた。天を仰ぐとスカッと明るい青空が広がっている。ハバロフスク駅もそうだったが、ホームに屋根がない。だから、開放感に満ちている。大陸らしい大らかな駅という印象だ。
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ウラジオストク駅が建設されたのは1893年のこと。ハバロフスク駅が1897年の完成だから、5年も早くできていたことになる。1891年の起工式の際には、ニコライ皇太子も立ち会ったとか。1912年に改築され、現在のロシアの宮殿を思わせる駅舎になった。壁の色はもともとグリーンだったというが、2000年代になって現在のクリーム色になった。
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優美なウラジオストク駅はじっくり見学する価値あり
ウラジオストク駅は優れた建築物としても知られ、構内の一部は有料で公開されている。オケアン号で到着した際は荷物があったので見学はせず、翌日に訪れてじっくり見学することにした。
優美なクリーム色の建物にいかつい屋根が載るという、アンバランスな魅力を讃えたウラジオストク駅。屋根の上に飾られている鉄細工はロシアの国旗に描かれている双頭の鷲をかたどっているそう。
正面玄関から中に入ると、すぐに待合室が広がっている。天井に描かれているのは、駅ができた当時のウラジオストクとモスクワの街並みとのこと。駅舎内はどこも趣のある意匠が施され、それらを眺めながら歩くのも楽しい。
かつての蒸気機関車とキロポストは有料で見学
ホームへは乗車券がなくても入ることができる。ただし、1945年当時の蒸気機関車とキロポストがある2番ホームは有料。オケアン号で到着した際、そのまま2番ホームに移動できるかなと思ったが、しっかり封鎖されていた。意外に渋い。というかしっかりしている。なお、蒸気機関車とキロポストはホーム間をつなぐ陸橋の上からも見ることができる。
2番ホームの入口には、いかつい顔のおじさんが見張っていて、無料で中に入ろうという輩を追い払っていた。私たちもひょいとホームを覗くふりをしたら、ダメダメというジェスチャー。せっかくなのでチケットを購入して2番ホームへ足を踏み入れてみることに。チケットは待合室の1画にあるカウンターで購入。「金払ってきたぞ!」とばかりにパスを見せると、さっきは邪険に追い払ったおじさんが「よしよし」という感じで、中に入れてくれる。
2番線ホームには蒸気機関車とキロポストしかない。ただ、近くで写真が撮り放題なので、それなりの価値はある……だろうか。蒸気機関車の運転席には運転手のマネキンが座っていて、なんだかシュールだ。
ウラジオストク駅前のレーニン像
さて、ウラジオストク駅まで来たら、忘れずにチェックしたいのがレーニン像だ。駅前のロータリーの向こうに立っているので、見落としがちではある。ソ連時代、全土で1万体以上あったといわれるレーニン像だが、1991年のソ連崩壊で多くのレーニン像が壊されたり、撤去されたりしたという。
ウラジオストクの駅前に残る貴重な?レーニン像は左手に帽子を持ち、右手で何かを指し示しており、躍動感に溢れている。レーニン像のポーズとしては、わりとポピュラーな部類かもしれない。
ちなみに、ハバロフスクにもレーニン像はあり、その名もレーニン広場に鎮座している。こちらのレーニンは柔和な笑みを浮かべ、好々爺といった趣だ。
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駅のお隣、国際客船ターミナル「海の家」へも足を延ばそう
そして、もう一カ所、足を延ばして欲しいのが、駅の裏というかお隣にある国際客船ターミナル「海の家」だ。その名の通り、国際客船が発着するターミナルで、鳥取県の境港からも週1便、定期貨客船が就航しているとのこと。ターミナルからは金角湾大橋が一望でき、とても見晴らしがいい。オープンエアの船着き場にはベンチもあるので、船や橋を見ながら、のんびりするのもいいだろう。
「海の家」内の土産物屋で“素朴”マトリョーシカを買う
ターミナル内には土産物屋やカフェなどもあり、けっこう賑わっている。ターミナル内にある土産物屋が意外にもよかったので、紹介しておこう。入口から左手にずんずん進んだところにある店で、マトリョーシカが豊富に揃っていた。
ロシアといえばマトリョーシカ人形! 私は旅前からハバロフスク&ウラジオストクで絶対にマトリョーシカを購入しようと思い、ハバロフスクでも数少ない土産物屋で見てみたのだが、どうも気に入らない。
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何が気に入らないか。顔である。ものすごく顔がいまどきなのだ。ありていに言えば、けばい。私が欲しいのはまだ入学したばかりの田舎の女子高生風のマトリョーシカなのに、あるのは渋谷を闊歩するギャル風ばかり。そういえば、日本のこけしや羽子板にあしらわれる押絵の女の子の顔も、いまふうに変わってきているとか。ロシアのマトリョーシカの顔がギャルになってしまうのも、致し方ないといったところか。
ギャルマトリョーシカを買わざるを得ないかと思っていたところに、期待せずに入った何の変哲もない土産物屋で、うぶな女子高生に出合った。よく見ると、女子高生も化粧はしている。たぶん田舎の高校3年生。そりゃ田舎だって、高校3年生にもなればオシャレしますわ。でも、渋谷のギャルほどけばくはない。そこはかとなくはじらいがある。ここでは自分用とお土産用に、全部で4体のマトリョーシカを購入した。
さて、マトリョーシカとは女の子の名前で、ゆえに描かれているのは女の子が定番だが、変わりマトリョーシカもある。その代表といえるのが、国の歴代指導者の顔を描いたもの。もちろん多いのはロシアのバージョン。プーチンーエリツィンーゴルバチョフースータリンーレーニンが定番だ。みんな手描きなので、顔がそれぞれ異なる。似ているものもあれば、あまり似ていないものも。
他にはアメリカもあり、トランプーオバマークリントンーブッシュのバージョンだった。数は少ないが、日本のバージョンもあって、安倍―野田―菅―鳩山だった。そういえば安倍首相の前は民主党政権だったなと、マトリョーシカではからずも思い出した次第。
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