ハバロフスクで“1日1ボルシチ”
初ロシアとして訪れたハバロフスクのグルメは、やはりロシアの伝統料理を中心に楽しんでみることにした。一番のお目当てはボルシチ。私は旅先でその土地の名物料理を食べ比べするのが好きで、毎日1食名物料理を食べることを自分に課すなんてことも。例えば、バンコク(タイ)では“1日1トムヤムクン”、ストックホルムでは“1日1ミートボール”、ブダペスト(ハンガリー)では“1日1グヤーシュ”といった具合。というわけで、ハバロフスクでは“1日1ボルシチ”を敢行することにした。
桶に入ったボルシチが迫力満点の「ルースキー・レストラン」
ハバロフスクで最初のボルシチを口にしたのは、「ルースキー・レストラン(Russian Restaurant)」。なぜこのレストランをを選んだかというと、単純にホテルに近かったから。到着したのが夜ということもあり、近場でなおかつロシア料理が味わえ、「トリップアドバイザー」でそこそこ評判が良かったからというのが理由だ。
地図に従って歩いて行くと、派手なレストランに行き当たる。店内は木造りのインテリアで親しみやすい雰囲気だが、客はなぜか日本人のみ。女性スタッフは民族衣裳のような制服をまとっており、観光客向けのレストランなのかな?という印象を受けた。スタッフの愛想はまあまあ。日本語のメニューもある。
お目当てのボルシチは桶のような器に入って登場! ビーツの赤か効いている。というか一面赤! 私のボルシチのイメージといえば、にんじんやじゃがいもなどもちょっと入っているスープ(そりゃミネストローネだ)だったので、少々面食らう。
さっそくいただいてみると、癖もなく比較的さっぱりとした味わい。ほんのりニンニクが効いていたような。ぼそぼそとした黒パンと一緒に食べると、何だか一気にロシアっぽくなる。
このレストランでは前菜としてニシン料理も頼んでみた。ニシン料理って何だか北の国の料理というイメージがあるのだ、私には。勝手にニシンの酢漬け的なものを予想していたのだが、出てきたのはオイル漬け缶詰めにでも使うようなやけにこぶりなニシン。食べてみると、かなり生。酢でしめているわけでもないのに生っぽいのは海外ではかなりキ・ケ・ン。なので、完食するのは避けた。付け合わせの紫キャベツやにんじん、ピクルスなどをみじん切りにしてマヨネーズっぽいソースであえたサラダはさっぱりとした中にもコクがあり、おいしかった。見た目からすると、もしかしたらこの料理はニシンの前菜ではなく、サラダなのかもね。
味わい深いボルシチは本家本元の味?「カバチョーク」
ハバロフスク第2日目に訪れたのは「カバチョーク(Kabachok)」。『地球の歩き方』にも載っている店で、「トリップアドバイザー」での評判も上々だった。ちなみに、こちらはウクライナ料理店ということらしい。ボルシチはウクライナ発祥の地で、それがロシアに伝わったとのこと。ということは、「カバチョーク」のボルシチは本家本元の味?といえるのかもしれない。
店は民家風の佇まい。ダイニングは階段を上った2階にあり、いくつの部屋に分かれている。スタッフに通された部屋に入ってみると、ここも全て日本人観光客! まあ『地球の歩き方』に掲載されているんだから、しゃーないわな。
ここのボルシチも赤強め。上に散らしたディルの緑がいいアクセントに。サワークリームが添えられていて、これを入れるとスープにコクが出る。「ルースキー」と比べると、全体的に味がしっかりとしていて、深い感じがした。
ここでは他にピロシキとビーフストロガノフを注文。ビーフストロガノフは全体的に白っぽく、ビーフストロガノフ=茶色という私のイメージとはまたまた異なるものであったが、タマネギのうま味をたっぷりとふくんだ生クリームソースがまろやかで豊かな味わい。ピロシキはパンではなくてパイ。ミートパイだ。パンっぽいものを想像していたので、こちらもまた想像を裏切られた。普通においしかった。
日本人が抱くイメージに一番近いボルシチを出すシベリア鉄道の食堂車
ハバロフスク3日目は残念ながら、ボルシチを食べ損なう。“1日1ボルシチ”を掲げていたにも関わらず、情けない。それもこれも50代のはがゆい胃袋のせいだ。というわけで、4日目のボルシチを紹介することにしよう。
この日はシベリア鉄道でウラジオストクへ行く日。そこで、シベリア鉄道の食堂車でボルシチをいただくことになった。シベリア鉄道の食堂車はまー、とにかくオペレーションが悪く、待てども待てども料理が出てこない。ビールを飲みながらじりじりとひたすら待ち続けてありついたボルシチは、じゃがいもなどの具材がごろごろ入っている上、トマトの味もしっかり感じられ、私がイメージするボルシチに一番近かった。
ここではボルシチのほか、ポークソテーとポテトサラダも頼んでみた。ポークソテーは日本の洋食店でも味わえるような、ちょっと懐かしいお味。ポテトサラダもしっかりとマヨネーズが効いていて、食べやすい味だった。
★シベリア鉄道についてはこちらの記事をチェック!
新しいおいしさ発見! ジョージア料理の「トゥリーグルジナ」
さて、ここからはボルシチ以外の料理にも触れていこう。ロシアではジョージア(旧グルジア)料理の人気が高く、ハバロフスクにも何軒かジョージア料理を提供する店がある。ちなみに、ジョージアは温暖な土地柄で、おいしいものの宝庫といわれているらしい。そこで、手頃な価格でジョージア料理が楽しめるという「トゥリーグルジナ(Tri Gruzina)」へ行ってみた。
店内は広々としてスマートにまとめられている。大きな窓があり、開放的な雰囲気だ。ランチタイムを過ぎて、客足がやや途絶えた時間帯での訪問だったので、スタッフものんびりとした感じ。とはいえ、パラパラと地元客も訪れていて、人気店であることが伺える。
こちらで頼んだのは、水餃子風のヒンカリとジョージア風ピザのハチャブリ、そして、豚肉の串焼き。ヒンカリとハチャブリはガイドブックで写真を見て、「食べたい!」と思っていたもの。ヒンカリは皮が分厚くてちょっと固め、水餃子というよりは大きな小籠包といった感じ。かぶりつくと肉汁があふれ出る。ハチャブリはパン生地の中央を少しくぼませて、その中にチーズソースを流し込み、卵を落として焼いたような感じ。クリーミーな味わいだった。
驚かされるのは、どちらの料理もデカい!ということ。写真で見ると、料理に寄ったトリミングをしているせいか、なんとなく小さく思えるのだが、実物はかなり大きい。ハチャブリなんて総菜パンくらいのイメージしかなく、1人に一つずつ頼もうかと思ったくらいだったが、頼まなくて良かった。普通のピザサイズです。
というわけで、豚肉の串焼きも大きかった。豚肉は柔らかいなかにも、歯ごたえも感じられ、いかにも肉!という感じ。炭焼きの風味も香ばしく、ジューシーだった。我らの失敗は、この串焼きを1人1つずつ頼んでしまったこと。日本の串焼き屋で食べるようなお上品なサイズを想像してしまっていたのだ。
50代の胃袋をヒーヒー言わせながら完食したのだが、おかげで夜になってもいっこうにお腹が空かず、“1日1ボルシチ”をあえなく断念したというわけ。“50代の胃袋襲うジョージアンたった3品で夜食べられず” お粗末!
ハバロフスクのビアホール2選「グスタフ・グスタフ」と「ビアフェスト」
ロシアというとウオッカ!というイメージがあるが、最近は若い人を中心にビールの人気も高まっているとか。そのせいかどうかわからないが、ハバロフスクにはいくつかビアハウスがあるようで、そのうち2軒に行く機会があった。
グスタフ・グスタフ(Gustav & Gustav)
ハバロフスクで最初に訪れたビアハウスは「グスタフ・グスタフ(Gustav & Gustav)」。『地球の歩き方』ではドイツのビアホール風とあったが、緑色を基調にした外観の佇まいはアイルランドに寄せているような気もする。
店内は広く、クラシカルなビアハウスといった雰囲気。ステージにはバンドのセットも。訪れたのはランチタイムだったので、演奏はなかった。「ルースキー・レストラン」で頼んでいまいち納得できなかったニシン料理を見つけ、ここでも頼んでみる。「ルースキー・レストラン」のような小魚ではなく、厚めのスライス。ただ、酢の風味はほとんどなく、やはり生っぽい。ハバロフスクのニシン料理はきっとこんな感じなんだろうと納得する。
なお、メニューにはなぜか餃子もあって、興味を引かれてそれも頼んでみる。普通に餃子だった。ウスターソースが添えられていて、意外に合う。ビールはさまざまな種類があった。
ビアフェスト(Beerfest)
もう1軒は「ビアフェスト(Beerfest)」。こちらは「トリップアドバイザー」で見つけたビアハウス。その日、ランチで訪れた「トゥリーグルジナ」で恐ろしく満腹になってしまい、夕食の時間になっても何かしら食べられる状態ではなかったので、急きょ行ってみることにした。
ここは店でビールを醸造しているとのことで、店内にはタンクもある。ハバロフスクでは老舗のビアハウスとのことだ。非常に大きな店で、スタッフもインカムで連絡を取り合っている。とはいえ、接客が良いかというとそれほどでもない。地元客で賑わっていて、活気にあふれている。いままで訪れたレストランでは日本人客しか見ていなかったのでなかなか新鮮。ビールも飲みやすかった。
ちなみに、この店にはなぜか寿司メニューがあり、テーブルの上にはキッコーマン醤油が常備されているのであった。
ハバロフスクで味わう豚骨ラーメン
宿泊した「パレスホテル」の最寄りのバス停の前に、ちょっと気になる店があった。それはラーメン屋!
ただ、看板は目立つのだが、扉は固く閉ざされていて、営業しているような雰囲気には見えない。潰れたのだろうかと思って前を通るたびに見ていたところ、中に入って行く人を発見! ハバロフスク最終日に訪れてみた。
恐る恐る重い扉を開けてみると、奥には地元客で賑わうラーメン店が! ちなみに、ハバロフスクでいろいろな建物を見てみると、冬の寒さに備えてか、二重扉にしているところが多かった。たぶんこのラーメン屋の扉もそういうことなのだろう。
店内は明るく、大きなスクリーンではなぜか映画『千と千尋の神隠し』を上映中。注文はカウンターで。メニューには看板にあった豚骨ラーメン(正しくは豚骨醤油)のほか、醤油ラーメンや塩ラーメン、カレーラーメンなるものもあった。私は豚骨醤油を食べてみたが、癖もなくするすると食べやすい味わい。日本で食べているラーメンとあまり変わらない。
ラーメンは日本円に換算すると1杯700〜800円くらいで、ハバロフスクの物価からするとちょいとお高め。ラーメン屋の話を旅行会社スタッフのミオリちゃんに話すと、彼女も行ったことがあるらしく「あそこのラーメンはおいしくて安い。地元でも大人気」とのこと。おいしいはわかるけれど、安いかな? その前にロシア料理の話をしていて、私が安くておいしいと思っていた「カバチョーク」は、「おいしいけれど高い」という評価だったから。
日本人に置き換えてみると、店で食べるおにぎり&みそ汁セットが800円は高いと思うけれど、ロシア料理店で食べるボルシチ1000円はそれほど高くないよってことなんだろうか。
番外編:「パルスホテル」の朝食で見つけたイクラとクレープのおいしいマリアージュ
最後に「パルスホテル」の朝食について触れておこう。私がこのホテルを選んだのは、そのクラシカルな佇まいに惹かれたのもさることながら、「朝食でシャンパンとイクラが味わえる」という情報があったから。
半信半疑で朝食レストランに向かったところ、あった! シャンパンとイクラ! 昔風の言い方をすると、朝シャンというやつだ。滞在中、しっかり朝シャンを楽しませてもらった。
イクラは塩が強めの味つけ。日本人なら白ご飯!といきたいところだが、ここはハバロフスク。ロシアではブリヌイというロシア風クレープと合わせて食べるというので、それを真似てみた。うまい! ロシア産のイクラとロシア風クレープ、ブリヌイの相性はバッチリ。ハバロフスクを訪れたなら、ぜひ試して欲しい組み合わせだ。
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