ハバロフスクのバーニャ(サウナ)を旅行会社で手配する
近ごろ日本ではサウナブームらしい。テレビや雑誌などで時々紹介されているが、それほど興味はない。顔のあたりまでもわーと熱気に包まれてしまうのが、あまり得意ではないのだ。それに一緒に入っている人に、「あいつ、さっき入ってきたばかりなのに、もう出て行きやがった。根性なしめ。ヒヒヒ」とか思われるのもなんだか癪に障るし。
それなのにハバロフスクでサウナに行こうと思ったのは単純な話。スケジュールに余裕があったから。そこで何かハバロフスクならではの体験をしてみようと思い立ち、いろいろ探すうちにサウナに行き当たった。サウナはそこまで好きじゃないけれど、旅先で入るのは一興であろうと。まあ、そういうことだ。
サウナといえばフィンランドだが、厳冬のロシアもサウナ文化が発達している。ちなみに、ロシアではバーニャという。『地球の歩き方』によれば、旅行会社で予約をするのがお勧めとあったので、とりあえず数社に連絡をとってみる。その中で感触と内容の良かったポータルセゾノフ社に依頼をすることにした。
【公式HP】
ポータルセゾノフ社の担当はアナスターシャ・ステパシコさん、『地球の歩き方』によれば彼女がどうやら代表らしい。彼女によれば、ハバロフスクには公衆浴場的なバーニャと貸切りのバーニャがあるとのこと。日程などの関係で公衆浴場的なバーニャはNGとなってしまったので、貸切りバーニャに行くことにした。
貸切りのバーニャもいくつかのタイプがあるようで、2つ提示してもらった中から趣のある方をチョイス。料金は往復の送迎やタオル代なども含めて1人90ドルだった(なぜかドル払い)。
瀧本美織似のガイドの案内で、いざバーニャ(サウナ)へ
バーニャに行く5月1日はちょうどメーデー。レーニン広場から教会広場までのムラヴィヨフ・アムールスキー通りはメーデーのパレードのため封鎖。通りはパレードに参加する人やそれを見物する人などで溢れていた。ガイドさんとはホテルのロビーで待ち合わせ。パレートを見物した後、ロビーに行ってみると、テーブルに大きなバスケットをどんと置いて待っている若い女性がいた。
どうやら彼女がポータルセゾノフ社から派遣されたガイドさんのよう。女優の瀧本美織さん似のかわいらしい雰囲気。なので、心の中でミオリと呼ばせてもらう。ミオリは韓国系のロシア人で、ロシア語と韓国語と日本語が話せるのだそう。早速流ちょうに日本語を操って、バスケットの中身について説明してくれる。
バスケットの中身はいわゆるバーニャセット。ビールやおつまみ、紅茶、はちみつ、アロマオイルなどか詰まっている。かわいらしい一揃いで、何だかテンションも上がってくる。ひと通り説明が終わったところで、いざ出発。乗用車で1時間ほどのバーニャへ向かう。
バーニャ(サウナ)の本格装備にテンションもマックス!
退屈な道を走ること約1時間。おそらくハバロフスク郊外であろうバーニャに到着した。広々とした敷地内に木造のコテージが数棟点在している。颯爽と車を降りたミオリが管理棟とおぼしき建物に入って行き、カギをもらってきた。ミオリに先導され、私たちに割り当てられた小屋へと向かう。
扉を開けると玄関があり、さらに扉を開けると4畳半くらいのリビングが広がっていた。リビングにはダイニングテーブル、壁には大きなテレビが掛かっている。ベンチの上にあるのはタオルと愛らしいサウナ帽。なんでもサウナに入るとき、この帽子をかぶって入ると、髪が蒸気で傷まないとのこと。なんだか本格的でテンションが上がる。
リビングから続くドアを開けるとそこがサウナスペース。脱衣スペースとシャワールーム、そしてサウナがあった。脱衣スペースには大きな桶があり、なにやら少し乾燥した木の枝を束ねたものが水の中に突っ込まれている。ミオリ曰く、「これは体を叩くものです」とのこと。おお、これは見たことがあるぞ。サウナでほてった体を水に浸した枝でぴしぴしと叩きくのは、フィンランドでもやっていたような? 本格的な装備を見て、さらにテンションが上がっていく。
肝心のサウナを覗いてみると、すでに蒸気が立ちこめている。熱い。熱い。バーニャの一画には石が積まれている(サウナストーンというらしい)。「これにお水をかけるとさらに蒸気が出てきます」とのこと。「アロマオイルを垂らしたお水をかけると、いい匂いになりますよ」。ミオリの言葉にさらにテンションが上がり、うんうんうんうんと力強くうなづく。
リビングにはもうひとつドアがあり、そこからも外に出られるようになっていた。このドアを出たところには、小さなプールのようなものがあった。ミオリ曰く、クールダウンのためのプールらしかったが、水は溜められていなかった。入りたければ自分で水を溜めるとのことだったが、なんだかちょっと汚れているようだったので、遠慮しておいた。
一通りの説明が終わると、ミオリは「じゃあ、2時間後にお迎えにきますね。楽しんで!」と言い、そそくさと帰って行った。町に戻ってまた帰ってくるんじゃ大変だから、どこかで待機しているのだろうか。
ハバロフスクのバーニャは貸切りだからサウナ初心者でも満喫できた!
時間もあまりないことだしと、さっそくバーニャに入る。勢いよく裸になり、サウナ帽をかぶる。なんだか間抜けな姿だが、別に誰かに見られるわけでもなし。これが貸切りの良いところだろう。まず大きな桶に水を溜め、そこにアロマオイルを数滴垂らす。モミの木のオイルらしく、爽やかな香気が広がった。
ひしゃくでその水をすくい、熱く熱せられているであろう石の上にかけると、ジューというものすごい音がした。水が一気に蒸発するとともに、モミの木の香気をはらんだ熱波がぶわっと広がる。熱い、熱い。ただ熱波は一瞬で収まるので、バーニャの中を熱気で充満させるには、何杯か水をかける必要がある。
タオルで仰いで熱気を拡散しているのをテレビのサウナ特集でやっていたのを思いだし、真似をする。いや、すごい。こりゃ、熱いわ。「ロウリュウ」あるいは「アウフグース」というらしい。なんだかどんどん楽しくなってくる。
バーニャの中は2段のベンチがある。貸し切りだから、その上に寝っ転がるのも問題ない。好きな体勢でじわじわとバーニャの熱を楽しむ。アロマの水に浸した枝で体を叩いたりもしたが、どうも勝手があまりよく分からない。これは叩く専門の人がいるところもあり、上手な人に叩いてもらうとそれはもう気持ち良い?らしいけれど。
熱くなったらバーニャから出て、バスローブを引っ掛けて部屋の外でクールダウン。5月初旬のハバロフスクは暑くもなく寒くもなく、クールダウンするにはちょうど良い陽気。外でビールをちびちび飲み、またバーニャに入ったりなど繰り返していると、あっという間に時間が過ぎていく。なお、この施設にはバーベキューコーナーもあって、地元の若者たちは肉などを持ってきて、自分たちで調理して楽しんでいるようだった。
施設内にはレストランがあり、食事も頼めるとのことだったが、どうもその日は営業していないようで、私たちは仕方なくバスケットの中に入っていた鮭とば的なものをかじり、空腹をしのぐ羽目になった。今度来るときはちゃんと食料を持っていこう。
2時間はあっという間に過ぎ、そろそろ帰り支度をしなければならない頃合いに。貸切りバーニャは人目を気にせず、好き勝手に楽しめるところがいい。サウナ初心者ながら大いに満喫でき、旅の土産話が一つ増えた。
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