極東ロシア2都市紀行(13)ウラジオストクの郊外〜沿海地方水族館とトカレフスキー灯台〜

極東ロシア2都市紀行

バスに乗って街の対岸、ルースキー島を目指す

ウラジオストク滞在最終日は郊外へ足を延ばすことにした。お目当てはルースキー島にある沿海地方水族館(プリモルスキー・オケアナリウム)。水族館なんて日本でもとんとご無沙汰なのに、なぜウラジオストクで行こうと思ったのか。それはインスタか何かで見た巨大なイカのオブジェに惹かれたから。その姿があまりにもシュールで、これはぜひ実際に見てみたいと思った次第。邪道な目的である。

水族館にはウラジオストク駅から63番のバスに乗って行く。停留所でかなり待たされたが、ようやくバスが来た。終点の水族館までは所要約40分。これは座れないときついなあと思っていたところ、無事に座席を確保できてひと安心。

こぢんまりとしたバス。
水族館に着くまでにはぎゅう詰めに

プーチン大統領が力を入れるルースキー島

ルースキー島はもともとウラジオストク軍港を守る要塞として重視された土地。ソ連時代には太平洋艦隊の基地も置かれ、民間人は立ち入り禁止だったとのこと。ソ連崩壊後は管理が行き届かなくなり、兵士が餓死する事件なども起こっている。

だが、2000年代に入り、脚光を浴びることに。目をつけたのはプーチン大統領。リゾート開発などが進められ、2012年のAPECの開催地ともなった。ウラジオストクの街とはこのときに完成したルースキー大橋で結ばれている。この橋は全長1104mで、斜張橋としては世界一の規模を誇る。

そういえば、2019年に安倍首相とプーチン大統領との首脳会談もウラジオストクで行われていた。安倍首相は確か極東連邦大学(FEFU)の宿泊施設に泊まったんじゃなかったかな? プーチンはよっぽどルースキー島が好きらしい。

停留所からひたすら歩いて沿海地方水族館へ

バスはルースキー大橋を走り、極東連邦大学の前を抜けて、ようやく終点の沿海地方水族館に到着。ここから水族館までは送迎バスが出ているのだが、定員が少なく、運行間隔も開いているので、バスを降りたほとんどの人は徒歩で水族館に向かうようだ。

朝は晴れていたものの、バスに乗っている間に天気はどんより下り坂。バスから下りると、冷たい風に襲われる。気温も下ってきているようで、なんだかうすら寒い。ぼやいていても仕方がないので、強い風に吹かれながら、ひたすら水族館を目指して歩く。他に建物もないだだっぴろい敷地を歩いてくこと約15分、やっと水族館に着いた

イカやタコの巨大オブジェな圧倒される

目当ての巨大オブジェは水族館の建物の外にあった。建物をぐるりと取り囲むような壁があり、そこに海の生物のオブジェが飾られている。

インスタで見たイカのほか、タコ、カニ、やどかり、くらげ、魚などがある。階段の途中に、門のようにデザインされたタコも圧巻だが、やはり白眉はイカである。岩の上にだらりと横たわり、なんともいえないうらめしそうな哀しげな目をしている。タコにはおかしみしか感じなかったのだが、イカにはなんともいえない哀愁がある。萩原朔太郎が見たら、きっと『死なない蛸』に勝るとも劣らない名文を生み出してくれたことだろう。

これがお目当てのイカ!

タコはなんだか怖い(笑)

カニはとてもリアル

 

巨大オブジェを見てここに来た目的のほとんどを達成したような気になったが、いやいや、せっかくだから中に入ろう。その前に目に飛び込んできたのは、何やらロシア語が書きつけられた巻物のオブジェ。これはプーチン大統領の言葉で「海を知るものは己を知る」と書かれているらしい。大上段に振りかぶった物言いが、いかにもプーチンっぽい(笑)。

これがプーチンのお言葉

スケールが大きく、よくできた水族館

さてさて、久しぶりの水族館である。結論から言うと、かなり楽しめた。さまざまな水生生物を展示し、見応えがある。日本の水族館でも人気のトンネル水槽もある。ざっと見て回るだけでも2〜3時間は必要だ。

トンネル水槽は大人でも楽しい

ペンギンもいる

サンゴ?の掃除をするスタッフ

クラゲにはなんだか癒される

イルカのショーなどもあるらしいが、別チケットが必要とのことでパス。ペンギンやクラゲの愛らしい姿に癒され、時間はあっという間に過ぎて行く。ランチを食べ損なっていたので、水族館内のカフェへ。カフェといっても、イスとテーブルが設置されたフリースペースに売店が設置されているといった感じだが、何もないよりはましだろう。サンドイッチとコーヒーでホッとひと息。サンドイッチはまずまずの味だった。

館内にはミュージアムショップ的なものもあり、水族館にいる生き物たちのぬいぐるみなども売っていた。イカのぬいぐるみが欲しかったのだが、大きめのサイズしかなく断念。手頃なサイズがあったら、絶対に買っていたよ、残念。

Yandexを使ってトカレフスキー灯台へ

水族館で楽しい時間を過ごした後は、またバスに乗ってウラジオストクの中心まで戻る。またしてもバスがなかなか来ない。天気はどんどん崩れてきて、何だか雨もよい。やっと来たバスでもしっかり座席を確保して、再び40分のバスの旅となる。

無事に街の中心まで戻ってきたが、ディナーまでは時間がある。そこでトカレフスキー灯台まで足伸ばすことにした。トカレフスキー灯台はウラジオストクがあるムラヴィヨフ=アムールスキー半島の南西端にある灯台で、満潮時には灯台までの道が海に沈んでしまうので、干潮時にしか近くまで行けないということでちょっぴり有名な場所。

駅からバスも出ているが、水族館の往復でさすがに疲れたので、タクシーで行くことに。こんなときに便利なのがロシアの配車アプリのYandex。ウラジオストクはハバロフスクに比べると観光のエリアが広範囲に広がっているので、Yandexにはかなりお世話になった。で、Yandexを起動! トカレフスキー灯台までは街から車で約15分までの距離。ちょっと遠目だが、すぐに行ってくれる車が見つかった。

街から少し離れた観光スポットにタクシーで行くと、だいたい運転手さんが「帰りどうするの? 待っていてあげようか?」と営業してくるものだが、このときの運転手さんからは何のリアクションもなし。商売っ気ないのよね、ウラジオストクの人たちって。

運良く干潮で、灯台の近くまで行けたよ!

灯台の駐車場でタクシーを降り、灯台までは歩いて行く。天気も悪いし、日も暮れかかっているので、観光客はあまりいない。トカレフスキー灯台は1910年に立てられたもので、高さは11.9m。

灯台までは石ころまじりの道が続いている。潮位を調べてこなかったのが、どうやら運良く干潮らしい。目の前にそびえる灯台を目指し、石ころの上を覚束ない足取りで歩いて行く。周りに何もないから、強い風が吹きつけてくる。雨も混じった風で恐ろしく寒い。水族館までの道といい、今日はどうも強い風に吹かれる運命らしい。寒さに耐えて、やっと灯台まで到着!

灯台までの道のりは遠い

真っ白な外壁に赤い屋根が愛らしい。絵になる佇まいではあるが、まあ、それだけです。夏は海水浴場として賑わうらしい。機会があれば、夏に来てみたい。

白い外壁に赤い屋根が愛らしい

お腹の大きい猫と遭遇。無事に中心地まで戻る

再び歩いて駐車場まで戻ってくる。さて、ここからまたYandexでタクシーを呼ぶことに。街からここまでタクシーは来てくれるのか!? ちょっとドキドキだったけれど、どうやら来てくれる車が見つかり安堵。

寒さに震えながら、タクシーを待っていると、コーヒースタンドの前に一匹の猫が……。ウラジオストクの猫は警戒心の強い子が多い印象だが、この猫はとても人懐っこい。ベンチに座っていたら、足に体をすり付けてきた。よく見るとお腹が膨らんでいる。もうすぐママになるんだね。コーヒースタンドのお姉さんからハムを分けてもらい、おいしそうに食べていた。塩分は大丈夫かしら。

お腹の大きな猫。ハムをもらったよ

猫と戯れていたら、無事にタクシー到着。帰路についた。

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