極東ロシア2都市紀行(2)何やら薄暗いハバロフスク。パルスホテルで救われる

極東ロシア2都市紀行

ハバロフスクでも配車アプリが活躍

ハバロフスク空港でぼんやりと佇んでいると、空がオレンジ色に染まってきた。さて、ホテルへ向かって移動することにしよう。市内へはバスも運行しているが、空港バスなどという上等なものではなく普通の市バス。同じ飛行機で一緒にハバロフスクに降り立った何組かの旅行者はそのバスで街に向かうようだった。だが、大きなスーツケースを抱えて不安定なバスに乗る自信は、50を過ぎたババアにはない。

ハバロフスク空港から見た夕日

というわけで、空港からホテルまではタクシーで向かうことにする。タクシーといえば、ここ数年来お世話になっているのが、配車アプリだ。Uberに代表される配車アプリは、いまやどこの国でも便利に使えるようになっている。いまだに使い勝手が悪いのは日本くらいじゃなかろうか。タクシー業界よ、どうにかせい。

ロシアで一般的に利用されている配車アプリはYandexという。このアプリはすでに日本でインストール済。さっそく起動してみる。ホテル名を入れて検索してみるが、どうも空港の敷地内には提携のタクシーしか入ってこれないらしい。仕方がないので、スーツケースをがらがらと引き、敷地から外に出た。

2〜3分ほど歩いて、大通りに出る。再びYandex起動。今度はすぐに空きタクシーが見つかった。ガイドブックによれば、街までの運賃は500〜600P(ルーブル)ということだったが、Yandexなら208P。安い。

やってきたのはグリーンのトヨタ・ベルタ。ハバロフスク&ウラジオストクにはトヨタをはじめ、日本車がかなり走っていた。きっと新潟から運ばれてきたんだろう。小柄な運転手はスーツケースをコンパクトなトランクに押し込み、軽快に車をスタートさせた。

アムール川のほとりに開けた街、ハバロフスク

空港から街へと向かう途上はいつもなんだか落ち着かない。列車やタクシーの窓から初めてのぞき見るその街の風景が、自分の感性にヒットするかどうか。それが自分と街との相性を決めるような気がするからだ。

日はすっかり落ち、街は暗闇に包まれていた。華やかなネオンなどほとんどない。車のヘッドライトが映し出す街並みは薄ぼんやりとしていて、様子はよく分からない。なんだかつかみどころがないという印象。街を歩く人も少なく、活気はあまり感じられなかった。これはまだ市街地に入っていないせいかもしれない。ちなみに、空港は街の北東10kmほどのところに位置している。

ハバロフスクはアムール川(黒竜江)とウスリー川の合流地点に拓けた街だ。19世紀の半ばまではロシアの領土なのか清の領土なのか、あいまいな立ち位置だったらしいが、1858年のアイグン条約でアムール川がロシアと清の国境となり、ハバロフスクはロシア領土となった。

このときにハバロフカ軍事基地となり、これが街の基礎となった。以降、ロシア極東地域の中心的な都市として発展し、現在も極東連邦管区の大統領全権代表部が置かれている。なお、ハバロフスクという名前は、1649年にこの地を訪れた探検家のエロフェイ・ハバロフにちなむ。

そうこうしているうちに、タクシーは市街地へと入ってきたようだ。だが、薄暗さはあまり変わらない。特に強いインパクトを感じられないまま、ホテルに到着した。大丈夫か!? ハバロフスク。

本当にこれが“迎賓館”ホテルなのか?

今回お世話になるのはパルスホテルParus Hotel。もともと迎賓館だった建物をホテルに改装したそうで、まさに“パレス”ホテルなのだろう。さぞかし立派なエントランスがあるのだろうと思っていたら、意外にこぢんまりとしていて拍子抜け。裏口のような雰囲気で、タクシーで到着したときにはそこがホテルの正面玄関だとはにわかに信じられなかったほどだ。

パルスホテルのエントランス。
これは昼間に撮影したもの

だが、翌日以降にホテルの周りをぶらぶらと歩いてみると、私が最初に「裏口?」と感じたのも、あながち間違いではなかったようだ。ホテルはアムール川に面しており、どうやら建物はアムール川に向かって建てられている模様。ホテル敷地内には、アムール川を望む展望台なども整備されていて、とても気持ちが良い。ただ、目の前がすぐアムール川の遊歩道だというのに、直接外に出ることはできないのが残念だった。

アムール川に面して立つホテル。
おそらくかつてはここが正面玄関?

https://hotel-parus.com/ja/welcome/

パルスホテルParus Hotelはその名に恥じぬゴージャスホテル

日もとっぷりと暮れ、悄然とした雰囲気が漂うホテル。ドアマンもおらず、自分でスーツケースをずるずると引きながらロビーへ向かう。かつて迎賓館だったというだけあって、内部はクラシカルな雰囲気で全体的にエレガントな雰囲気が漂う。フロントには女性スタッフが3人。うち1人はなかなかのロシア美人。

ロビーの雰囲気。なかなかクラシック。

なお、ロシアではホテルのチェックインの際、ホテルが移民局への滞在証明書登録を行うらしく、この手続きに少し時間が掛かる。「先にお部屋へどうぞ」というので、パスポートを預けたまま部屋に向かった。

案内されたのは廊下のどん突きにあり、窓からはアムール川が望めた。クラシカルなインテリアと広々とした空間は好ましく、一気にテンションが上がる。これがまさにハバロフスクに来て、初めてテンションが上がった瞬間だった。バスルームも広々。トイレの横には今どき珍しくビデまでついている。清潔さも申し分ない。アメニティはロクシタンだった。

客室はこんな感じ

広々としたバスルーム。なんとビデまで

一通り室内をチェックし終わって時計を見ると、もうそろそろ9時になろうという時間。このままではハバロフスク初日のディナーを食いっぱぐれる。慌ててフロントへ取って返し、バスポートを返してもらって外に出た(ロシアでは外出時パスポート必携)。

このホテルは目抜き通りのムラヴイヨフ・アムールスキー通りと目と鼻の先にある。街は相変わらず薄暗い。広場にある教会とオベリスクが、ライトアップで暗闇に浮かび上がる。地元の若者か観光客か分からないが、記念撮影に興じる人たちも。賑やかな人の声を聞くとなんだかホッとする。

アムール川沿いの埠頭は、夜になると若者で大賑わい

食事をする前は何だか心許ない思いがしていたが、人間というのは現金なものでお腹が膨れると、俄然元気が出るものだ。食事前はご飯を食べたらとっとと寝たいと思っていたが、ホテルまで戻りがてらちょいと周辺を散歩してみようかという気になる。

教会がある広場を抜けて、アムール川の遊歩道へ。街灯はあるもののやはり暗い。だが、ぶらぶらと歩いていくと、何やらネオンが賑やかな場所を見つけた。見ると飲物やスナックなどを売る店がずらっと並んでいるではないか。パーキングにはおびただしい数の車。さらに次から次へと車が入ってくる。考えてみると今日は日曜。若者たちが集まっていてもおかしくはない。アムール川沿いの埠頭は、さながら週末の大黒ふ頭の様相を呈していたのであった。

飲物やスナックを提供するこんなお店が、
アムール川の埠頭の一画に固まってあった

車で乗りつける若者たち。だって日曜の夜だもん!

なお、ハバロフスクのグルメについては、別にページを割いてお伝えしたいと思う。

極東ロシア2都市紀行(6)ハバロフスクのグルメ〜ボルシチからラーメンまで〜
ロシアの伝統料理ボルシチを食べ比べ。他に、ジョージア料理やビアパブなども紹介します。期待せずに食べた豚骨ラーメンは意外なおいしさ。ホテル朝食のシャンパ&イクラも忘れられない旅の味に。

 

 

コメント